神楽・歌舞妓其他の現在芸能は固より呪師田楽以前の神事・劇舞踊などに現れた翁の形態の知識の上に、更に、其現に行はれてゐる演出の見学から、体験に近い直観を得ねばなりますまい。沖縄の島渡りをして、私の見聞きしたのは、此から話さうとする三つの型でありました。
三 沖縄の翁
祖先考妣の二位の外に、眷属大勢群行して、家々をおとなふ形。盂蘭盆の行事である(一)。海上或は洞穴を経て、他界の異形(又は荘厳な姿)の、人に似た霊物が来て、村・家を祝福する形。清明節其他、祭りの日にある(二)。村の族長なる宗家の主人並びに一門中の代表者と見なされる群衆を伴うた、前族長なる長者が踊り場へ来て、村を祝福するのを一番として、村々特有の狂言《チヤウゲン》(能狂言・俄などに似た)を行うて、後は芸尽しになる。村によれば、長者の一行が舞台に来ると、家長の挙げる扇に招かれて、海の彼方の富みの国から、其主神が来て、穀物の種を与へて去る式をする処もある。此神の名は儀来《ニライ》の大主《ウフヌシ》、長者の名は長者の大主《ウフヌシ》、家長の名は親雲上《ペイチン》と言ふ。童満祭《ワラビミチ》に行ふ(三)。私の目で見た知識よ
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