王の伊勢への発向も、路次の様子から見れば、神の群行を学んで居たのかと想像せられる。にゝぎの尊の五伴緒《イツトモノヲ》を連れて降られたと言ふのも、此群行である。群行にも、中心となる主神があつた事は、住吉神の物語で訣る。唯その主神が二体である事があり、単に二人連れで来る事がある。又、主神一人で来た場合もある。
二体である場合は、夫婦と見、多くは老人と考へて来た様である。しひねつ[#「しひねつ」に傍線]彦とおとうかし[#「おとうかし」に傍線]とが、爺婆に扮して簑笠を着て、敵の中を通つて天香具山の土を盗んで来た(神武紀)と言ふ伝へは、実はまれびと[#「まれびと」に傍線]に扮した村々の事実を、大倭の象徴たる山の土を以てした呪咀に結びつけて、二人の姿が考へ出されたのである。(「ほ・うら」の章参照)。簑笠は、神に姿をやつす神聖な道具であつた。簑笠を着て屋内に居る事を、勅命で禁じた(天武紀)のは、屋うちで其を脱がぬまれびと[#「まれびと」に傍線]と間違へるからとも、まれびと[#「まれびと」に傍線]に対して弊風を認めて、其を制したものとも考へられるほかは、意味のない事である。老人夫婦のまれびと[#「まれ
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