印の形式が、混雑して居たとすれば、其使ひ道から見て、此をまとい[#「まとい」に傍線]とも言うた事があつたであらう。ばれん[#「ばれん」に傍線]・馬印が形式上区別が無くなつても、初めの中は、僅かながら、用途の差違は、知られて居たことゝ考へる。
まとい[#「まとい」に傍線]の要素たるばれん[#「ばれん」に傍線]や、張り籠の多面体が、後の附加だとすれば、愈|彼《かの》自身たて物[#「自身たて物」に傍線]と近づくので、旗の布を要素としない桙の末流らしく、益考へられて来る。蒲生家のさし物[#「さし物」に傍線]が、熊の棒[#「熊の棒」に傍線](蒲生軍記)或は熊の毛の棒[#「熊の毛の棒」に傍線](古戦録)と言ふ名で、其猛獣の皮が捲いてあつたといふ事実は、愈すたんだぁど[#「すたんだぁど」に傍線]一類の物として、まとい[#「まとい」に傍線]・自身たて物[#「自身たて物」に傍線]の源流らしいものがあつた事を、仄かして見せてゐるのではなからうか。やまとたける[#「やまとたける」に傍線]等の八尋桙・丈部の杖からまとい[#「まとい」に傍線]に至る間に、歴史の表に顕れずして過ぎた年月があまりに長く、又可なり縁遠
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