まといの話
折口信夫

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)萱振《カヤブキ》合戦

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)摂津豊能郡|熊野田《クマンダ》村

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「巾+正」、219−16]幟

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)めい/\
−−

     一 のぼり[#「のぼり」に傍線]といふもの

中頃文事にふつゝかであつた武家は、黙つて色々な為事をして置いた。為に、多くの田舎侍の間に、自然に進化して来た事柄は、其固定した時や語原さへ、定かならぬが多い。然るに、軍学者一流の事始めを説きたがるてあひに、其がある時、ある一人のだし抜けの思ひつきによつて、今のまゝの姿をして現れた、ときめられ勝ちであつた。其話に年月日が備はつて居れば居る程、聴き手は咄し手を信用して、互に印判明白に動かぬ物、と認めて来た。明敏な読者は、追ひ書きの日附けが確かなれば確かなるだけ、真実とは、ともすれば
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