ない。契沖は、花蘰として解してゐるが、はねかづら[#「はねかづら」に傍線]は其まゝで解したいものである。
沖縄では、加冠の時に、黒※[#「巾+責」、第3水準1−84−11]空頂を予め拵へて置いて、被せる。黒※[#「巾+責」、第3水準1−84−11]はかづら[#「かづら」に傍線]の変形であらう。そして、男が元服の時、黒※[#「巾+責」、第3水準1−84−11]をつけたと同様に、女ははねかづら[#「はねかづら」に傍線]を著けたのではなからうか。
万葉の歌を見ると、処女に手のつけられない、男の悶えを詠んだ歌が沢山あるが、通経前の処女に手を著けるのは、非常に穢れだとしてゐたもので、先年、私が伊豆の下田で聞いた俗謡にも、未だに、其意味が謡うてあつた。ふれいざあ[#「ふれいざあ」に傍線]教授は「ごうるでん・ばう」の中に、少女の月事を以て隠れてゐるのを、犯した男が罰せられるのは、少女の神聖を破る為だ、と説明してゐる。併し、此にも、も少し深い意味を考へなくてはならない様である。
元服以前の女に手を附けると、神罰に触れると言ふけれども、日本の神道では、月事があつたり、夫を有つたりすることは巫女たる資格に
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