ゐる。外から災を与へる霊魂をもの[#「もの」に傍線]と言ひ、鬼《オニ》は此である。平安朝時代には、鬼のことを「もの」と言うてゐる。自分の霊魂は「たま」である。随つて物部は、外から災する恐しい力を持つた霊魂を、追ひやる部曲と解するのが、本義であらう。
武士のするはちまき[#「はちまき」に傍線]には種々あつて、即、後で立てるもの、前で立てるもの、狂言に出る町の女房などのするもの等、此等は皆、兜を被る時、下に著けるものと同じで、時には烏帽子を被ることもある。はちまき[#「はちまき」に傍線]と烏帽子とは、実は同じもので、戦争に出る人の物忌みの標だつたのである。物忌みをして、敵の持つ力を拒ぐのである。今も片田舎に行くと、お客の前でわざ/\手拭ひを被ることをする地方がある。賓客を神として扱ふ遺風で、此例は沢山ある。
おび[#「おび」に傍線]と、かづら[#「かづら」に傍線]と、手拭ひとは、結局一つである。現に、泉州から曾て私の家に来てゐた若者は、帯のことを帽子と言うてゐた。女は、臨時の物忌みの標に、三尺の布巾を腰に結び、頭に結んだので、帯であると倶に、手拭ひであつたのだ。手拭ひがはちまき[#「はちま
前へ
次へ
全15ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング