体演劇は、東・西其出発点を異にしてゐるので、其時分は、或処では紫帽子、或処では桂帯をしてゐたのだ。此処にも、帽子とはちまき[#「はちまき」に傍線]と二通り並ぶ訣だ。女形は後結びのはちまき[#「はちまき」に傍線]をしたが、此がはちまき[#「はちまき」に傍線]の変形とは考へられない。二つが並び行はれてゐたかも知れないのである。神社芸術から出た能・狂言、その要素を含んで現れた歌舞妓は、女歌舞妓の時代から桂帯を著けてをり、若衆歌舞妓になつても、其風を追うてゐる。団十郎は若衆の家であり、助六も若衆である。二代目団十郎から出た曾我[#(ノ)]五郎も若衆である。助六のはちまき[#「はちまき」に傍線]も、実は、狂言の筋以外の、神社芸術をやつてゐた人の服装の約束なのであつた。
上達部《カンダチメ》の意味は、文字からでは訣らぬ。祭時に祓ひ浄める者をかむだち[#「かむだち」に傍線]と言ふ処から見て、まうちぎみ[#「まうちぎみ」に傍線]と共に神事に関係するものであらう。沖縄の紫の帯を著けたまちぎ[#「まちぎ」に傍線]は、まうちぎみ[#「まうちぎみ」に傍線]と同じで、やはり神事に与る。
物部の意義も色々説かれて
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