くり」に傍線]であつた、と見て異論はない筈である。此棚にゐて、はた織る少女が、即棚機つ女《メ》である。さすれば従来、機の一種に、たなばた[#「たなばた」に傍線]といふものがあつた、と考へてゐたのは、単に空想になつて了ひさうだ。我々の古代には、かうした少女が一人、或はそれを中心とした数人の少女が、夏秋|交叉《ユキアヒ》の時期を、邑落離れた棚の上に隔離せられて、新に、海或は海に通ずる川から、来り臨む若神の為に、機を織つてゐたのであつた。
かうして来ると、従来、
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天《アメ》なるや、おとたなばた[#「おとたなばた」に傍線]のうながせる、玉のみすまる、みすまるに、あな玉はや。三谷二渡《ミタニフタワタ》らす、あぢしきたかひこねの[#「あぢしきたかひこねの」に傍線]神ぞや(記)
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といふ歌のたなばた[#「たなばた」に傍線]も、織女星信仰の影の、まだ翳さない姿に、かへして見る事が出来るのである。おと[#「おと」に傍線]といひ、玉のみすまる[#「玉のみすまる」に傍線]といひ、すべて、天孫降臨の章の説明になるではないか。而も、其織つた機を着る神のからだ[#「
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