ものもあつたが、多くは、一時的の臣だつたのである。併し、しよろり[#「しよろり」に傍線]・そろり[#「そろり」に傍線]の語から考へて、此は後の幇間の前駆をなしたもの、と見ることも出来ると思ふ。
日本には、幇間的職分を持つたものは、古くからあつた。王朝時代、貴族に仕へた女房たちの為事と言ふのは、そこの子弟を教育するのが、主なるものとなつてゐたのだが、其教育は、なか/\行き届いたもので、時には、其娘や息子たちの為に、艶書の代筆などをもやつてゐる。此が、後には、男で文筆あるものが替つてやるやうになつた。隠者の文学は、そこから発生した。兼好法師が、師直の為に艶書の代筆をしたといふのは、事実であつたらう。当時では、決して、珍しいことではなかつたのである。
尚、此外に、奴隷から出て、君側に侍つたものがあつた。併し、戦国時代には、すつぱ[#「すつぱ」に傍線]・しよろり[#「しよろり」に傍線]などが侵入して、いつか、此等のものとの間に、歩み寄つた生活をしてゐた。何故、彼等が、其等のものとの間に歩み寄つた生活を為し得たかに就ては、考ふべき点があると思ふ。

     一三 異風・乱暴の興味

阿国歌舞妓
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