。其が多勢の子分を連れてやつてくる。而も、彼等は法力を持つてゐる。ひと先、整理をつけなければならぬ時が来たのであつたが、其処置には、全く困惑したやうであつた。
かうして彼等のうち、織田・豊臣の時代までに、しつかりとした擁護者を得て、落ちつく事が出来なかつた者は、再、落ちつく機会を失つて了うたのであつた。
それでも、村落にしつかりとした基礎を持つてゐたものは、まだよかつた。即、彼等は、そこへ帰つて、郷士となつた。
又、彼等の中には、早く江戸を棄て、宗教の名を借りて、悪事を働いた高野聖の様なものもある。其後も、永く旅人を困らせたごまの灰[#「ごまの灰」に傍線]は、高野聖の一種であつた。高野でも、此には困つたので、非事吏などゝ、意味もないやうな名をさへ出したほどである。
彼等の中、最、困つたのは、江戸や大阪・堺などに未練を持つた連衆で、何と子分の始末をすべきか、其が大きな問題であつた。そこで、彼等は、其子分たちを、諸大名の家へ売りつけることを考へた。人入れ稼業は、かうして始つたのである。そして、彼等は所謂侠客となつた。親分・子分の関係は、前に述べた様に、農村の制度からとつたものであるが、今日
前へ
次へ
全31ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング