ひの手だてにも変化する。「うけひ」と言ふ語には、判断に迷うた時神の諭す方に随ふと言ふ考へと、神に二人以上の者の正邪を判決させる場合と、誓ひの手段として採る場合との三つがある。
其対象となるものは、神の示すところの「ほ」である。あけたつの[#「あけたつの」に傍線]王《ミコ》の場合にも、うけひまをして[#「うけひまをして」に傍線]鷺をうけひ落しうけひ活し、木の葉をうけひ枯しうけひ生かしたとある。神の「承《ウケ》ふ」象《ホ》を請ふ事になる。
「ほ」と言ふ語は早く忘れられて、専ら語部《カタリベ》の口から移つて行つた歌詞となつて了うた。其と共に別の語が其位置をとつて、而も意味が一方に偏する事になつて来た。たゝる[#「たゝる」は罫囲み]と言ふのが、其である。
たゝる[#「たゝる」は罫囲み]と言ふ語は、記紀既に祟《スヰ》の字を宛てゝゐるから奈良朝に既に神の咎め・神の禍など言ふ意義が含まれて来てゐたものと見える。其にも拘らず、古いものから平安の初めにかけて、後代とは大分違うた用語例を持つてゐる。最古い意義は神意が現れると言ふところにある。允恭紀に淡路の島で狩りせられて、終に獲物がなかつたので、占はれる
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