あひての人格の一部又は表象となる物を対象に据ゑて、此に呪言をかける(即、ことゝふ)事になつてゐる。
うけひ[#「うけひ」に傍線]の効果として現れるはずの「ほ」が、混乱して逆に当体の代表物を立てる法が、とこひ[#「とこひ」に傍線]・かしり[#「かしり」に傍線]の上に出て来る。とこはれ、かしられる当体の性質から見て「ほ」の変形と見る事は間違ひでなからうと考へる。大体うけひ[#「うけひ」に傍線]は「ほ」の側から見れば、二次的なものである。其「ほ」が積極消極両方面に現れて来たものが、段々不当不正の場合にばかり出現を乞ふ事になつたのであるが、かしり[#「かしり」に傍線]になると、再《ふたたび》形を変へて「ほ」が出て来る事になつた訣である。
おなじくかしり[#「かしり」に傍線]と言うても、とこひ[#「とこひ」に傍線]に近いものだと対照風のもの言ひを忘れて居ない。御馬《ミウマノ》皇子、三輪《ミワ》の磐井《イハヰ》の側で討たれる時、井を指して詛した語は「此井は百姓のみ唯飲む事を得む。王|者《ハ》飲むに能はじ」と言うたと言ふのが其である。
椎根津彦と弟猾《オトウカシ》とが香具山の土を盗んで来て種々の土器
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