つく事を避ける力あるものと言ふ考へを基礎として居る様だが、外出の為でなく、居つく[#「居つく」に傍点]為の呪術である。「ふむ」行事を行うた処には、悪霊が居なくなると言ふ考へから出たもので、外出先で行うた僅かな例の方が、寧古風なのである。其が固定して、外出に踏むと言ふ考へから、途中から邪気を持ち返る事を防ぐ効験あるものと考へる様になつた次第である。
神の脚によつて踏みとゞろかされた地には、悪精霊が居る事が出来ない上に、新に来る事もしない。其で新室に住む始めに、神に踏み固めて貰ふのであつた。「新室を踏静児《フミシズムコ》」など言ふのは、舞ひ人の処女の舞踏にも威力を認める様になつたからであらう。足踏みの舞踏を行ふ事は、ある地を占める為である。目に見えぬ先住者を退散させる事である。今も土御門流の唱門師の末などで、反閇を踏んで、家の悪霊退散の呪ひをする者がある。反閇は一種の「大殿祭」の様なもので、「新室ほがひ」の遺風であらう。
新室の住みはじめに、なぜ貴人を招待するか。此古い形は、村々の君として、神の力を持つた人を招いた事があつたからである。文献は語らぬが、其前に若衆の中の一人が、仮装神として臨
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