学以前の神で、その系統外に逸した神なる事を示してゐる。
常世に対して「根の国底の国」を考へ、其を地下那落にあるものと見る事になつたのは、葬法の変化からも来てゐるが、主としては常世と区別する為であり、又常世を浄化して天上に移す様になつてからの事である。醇化を遂げた神の住みかなる天上は、些《いささか》の精霊臭をもまじへなかつた。そこには「死の島」の思想は印象を止めなかつた。天上を考へ出す順序としては、柳田国男先生の常に説かれる水平線の彼方を空とし、海から来る神をも天上から降つたものと見るとせられるのと反対に、海のあなたの存在の考へが、雲居の方、即天つ空の地を想定する事になつたと思ふ。尤、此には、天を以て神の常在地とする民族の考へ方の影響の交つてゐる事は勿論である。さうなつても、唯「日のみ子」に限つては、「死の島」を高天[#(个)]原に持つ事が出来たのである。
私の考へでは、高天[#(个)]原と常世とを持つ民族の混淆もあらうが、主としては海岸から広つた民族として常世をまづ考へてゐたものとし、其が高天[#(个)]原を案出する事になつたのだとするのである。
常世は富み・齢・恋の国であると共に、魂
前へ
次へ
全34ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング