合併せんと力《つと》めおれり。
第六に、神社合祀は土地の治安と利益に大害あり。むかし孔子に子貢が問いけるは、殷の法に灰を衢《まち》に棄つる者を※[#「※」は「月+りっとう」、515−8]罪《あしきり》に処せるは苛酷に過ぎぬか、と。孔子答えていわく、決して苛酷ならず、灰を衢に棄つれば風吹くごとに衣服を汚し、人々不快を懐《いだ》く、自然に喧花《けんか》多く大事を惹き起こさん、故に一人を刑して万人慎むの法なり、と。西洋諸国、土一升に金一升を惜しまず鋭意して公園を設くるも、人々に不快の念を懐かしめず、民心を和《やわ》らげ世を安んぜんとするなり。わが邦幸いに従来大字ごとに神社あり仏閣ありて人民の労働を慰め、信仰の念を高むると同時に、一挙して和楽慰安の所を与えつつ、また地震、火難等の折に臨んで避難の地を準備したるなり。今聞くがごとくんば、名を整理に借りてこれら無用のごとくして実は経世の大用ある諸境内地を狭めんとするは、国のためにすこぶる憂うべし。
近ごろ本邦村落の凋落はなはだしく、百姓|稼穡《かしょく》を楽しまず、相|率《ひき》いて都市に流浪し出で、悪事をなす者多し。これを救済せんとて山口県等
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