と骨ばかり享《う》け、時としては何一つ食わず、それに猫は常に飽食して竈辺《かまどべ》に安居するは不公平ならずやと怒る。猫は約束だとて受け付けず、犬その約束を見たいというから、委細承知と屋根裏に登ると、原来かの誓書に少し脂《あぶら》が付きいたので、※[#「鼬」の「由」に代えて「奚」、第4水準2−94−69]が食い込んで巣を構えいた。猫大いに驚き※[#「鼬」の「由」に代えて「奚」、第4水準2−94−69]を殺し食ったが、犬は猫が誓書を示さぬを怒り、これを咬《か》んで振り舞わした。爾来犬猫を見れば必ず誓書の紛失を咎《とが》め、猫また※[#「鼬」の「由」に代えて「奚」、第4水準2−94−69]を追究すると。
古川重房の『筑紫紀行』十に、丹後の九世渡の犬の堂、これは戒岩寺と智恩寺と両寺して犬一つ飼いけるが、両寺一度に鐘を鳴らすを聞いて、何方《いずかた》にか行かんと行きつ戻りつして労《つか》れ死にせしを埋めたる跡なりとて、林道春《はやしどうしゅん》の文を雕《ほ》りたる石碑立てりとある。桑門|虚舟《きょしゅう》子の『新|沙石集《しゃせきしゅう》』四に、『経律異相』から『譬喩経』を引いて、「人あり、
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