十二支考
犬に関する伝説
南方熊楠

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)麪包《パン》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)歩む事|叶《かな》わず。

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「鼬」の「由」に代えて「奚」、第4水準2−94−69]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)びやう/\
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       1

 南洋ニュウブリツン土人の説に、犬はもと直立して歩み甚だ速やかに走って多くの人を殺した。そこで生き残った人間が相談して、麪包《パン》果を極めて熱しその種子を犬の通路に撤《ま》いた。犬これを踏んで足を焼き、倒れて手をも焦し、それより立って歩む事|叶《かな》わず。その種子今も、犬の足の裏に球となって残りあるという(一九一〇年版、ジョージ・ブラウンの『メラネシアンスおよびポリネシアンス』二四四頁)。
 明治十五年、予高野登山の途次、花坂の茶屋某方で年十八歳という老犬を見た。今まで生きいたら五十
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