魚多く入る。上の爺怒って小犬と魚を掏《す》り替えて還った。下の爺自分の筬に入った小犬を持ち還り成長せしむると、日々爺の道具等を負って爺に随って山へ往く。一日犬山に入って爺に教え、あっちの鹿もこっちへ来《こ》う、こっちの鹿もこっちへ来うと呼ばせると、鹿多く聚《あつ》まり来るをことごとく殺して負い帰り、爺婆とともに煮て賞翫する。所へ上の家の婆来って仔細を聞きその犬を借りて行く。翌日上の爺その犬に道具を負わせて駆って山に往き、鹿と呼ぶべきを誤ってあっちの蜂もこっちへ来う、こっちの蜂もこっちへ来うと呼ぶと、諸方より蜂飛び来って爺のキン玉を螫《さ》し、爺大いに怒って犬を殺しその屍を米の木の下に埋め帰った。下の爺|俟《ま》てども犬が帰らず。上の爺を訪ねて殺されたと知り、尋ね往きてその米の木を伐り、持ち帰って摺《す》り臼を造り、婆とともに「爺々前には金下りろ、婆々前には米下りろ」と唄うて挽《ひ》くごとに、金と米が二人の前に下りた。暴《にわ》かに富んで美衣好食するを見て上の婆羨ましくまた摺り臼を借りて爺とともに挽くに、唄の文句を忘れ「爺々前には糞下りろ、婆々前には尿下りろ」と唄うた通り不浄が落ちたので
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