我に食わる、汝も下り来りて食われよというと、我命ある内は下らぬというから、夜叉も気長く守って樹下に眠る。その上から漁師の子が自分の衣を脱いで擲《なげう》ち、あまねく夜叉の体を覆うと、狗ども夜叉を人と心得、寄り集まって食い尽したとある処が、白竜《はくりょう》魚服《ぎょふく》して予且に射られた故事に似て居る。
狗どもが夜叉を食い居る間に漁師の子は脱れ走った。途上で我が叔父(母の兄弟らしい)世を捨て仙人となり居る者ありと聞くから、その人を憑《たの》もうと惟《おも》い、山を分けて尋ね往く最中、王の使いまた追い来って捕えかかる故、決心して谷へ身を投げた。その髻《もとどり》を王使が捉えて手中に留まったのを王に示して、この通りかの者を誅したと告げたので、王大いに悦び重く賞賜した。時に仙人の住所を護る神来って仙人に告げたは、汝の外甥児《がいせいじ》今苦悩に逼《せま》られ居るを知らずやと。仙人我れ我甥を懸念せずんば只今死すべしと答えた。この仙人男を女に、女を男に変ずる呪法を知っており、すなわちその法を外甥に伝えた。今は怖るる事なし、思う所へ往けというから、外甥その法を行うて自ら美女に化し、相貌殊好、特
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