といいければ、小猿の僉議《せんぎ》に任せて、各板一枚草一把を構えて橋に渡し、筏に組みて自然に竜宮城に至れば、竜王、怒りをなして大なる声を起して光を放つほどに、猿猴霧に酔い雪に怖れて顛《たお》れ伏す。小猿雪山に登りて大薬王樹という樹の枝を伐って、帰り来りて酔い臥したる猿どもを撫《な》ずるに、たちまち酔《えい》醒《さ》め心|猛《たけ》くなって竜を責む。竜王光を放って鬩《せめ》ぎけるを大王矢を射出す。竜王大王の矢に中《あた》りて猿猴の中に落ちぬ。小竜ら戦わずして遁れ去りぬ。猿猴ら竜宮に責め入って后を取り返し七宝を奪い取って本の深山に帰る。
さてかの舅氏国の王失せにければ、大国、小国、臣下等この王を忍びて迎え取りて、二箇国の王としてあり、細かには『六波羅蜜経』にぞ申しためると。
熊楠いまだ『六波羅蜜経』を見及ばぬが、三国呉の時支那へ来た天竺三蔵法師康僧会が訳した『六度集経』五にラーマーヤナ譚あるを見出し、『考古学雑誌』四巻十二号へ載せた。当時の俗支那語で書いたらしくてちょっと読みにくい。大意は『宝物集』と同様ながら、板や草を橋筏とする代りに石を負うて海を杜《ふさ》ぎ猴軍が渡ったとあり。私陀
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