十二支考
猴に関する伝説
南方熊楠

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)烏帽子《えぼし》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一条摂政|兼良《かねら》公の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「にんべん+其」、24−11]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)むく/\と
−−

     (一) 概言

       1

 一条摂政|兼良《かねら》公の顔は猿によく似ていた。十三歳で元服する時虚空に怪しき声して「猿のかしらに烏帽子《えぼし》きせけり」と聞えると、公たちまち縁の方へ走り出で「元服は未《ひつじ》の時の傾きて」と附けたそうだ。予が本誌へ書き掛けた羊の話も例の生活問題など騒々しさに打ち紛れて当世流行の怠業中、未の歳も傾いて申《さる》の年が迫るにつき、猴《さる》の話を書けと博文館からも読者からも勧めらるるまま今度は怠業の起らぬよう手短く読切《よみきり》として差し上ぐる。
 猴の称《とな》えを
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