諸国語でざっと調べると、ヘブリウでコフ、エチオピア語でケフ、ペルシア語でケイビまたクッビ、ギリシア名ケポスまたケフォス、ラテン名ケブス、梵名カピ、誰も知る通り『旧約全書』が出来たパレスチナには猴を産せず。しかしソロモン王が外国から致した商品中に猴ありて、三年に一度タルシシュの船が金銀、象牙《ぞうげ》、猴、孔雀《くじゃく》を齎《もた》らすと見ゆ。その象牙以下の名がヘブリウ本来の語でなく象牙はヘブリウでシェン・ハッビム、このハッビム(象)は象の梵名イブハに基づき、孔雀のヘブリウ名トッケイイムは南インドで孔雀をトゲイと呼ぶに出で、猴のヘブリウ名コフは猴の梵名カピをヘブリウ化したので、孔雀は当時インドにのみ産したから推すと、ソロモンが招致した猴も象もアフリカのでなくインドのものと判る。
[#「第1図 アッシリアの口碑彫りたる象と猴」のキャプション付きの図(fig2539_01.png)入る]
それから古アッシリアのシャルマネセルの黒尖碑(第一図)を見ると、一人一大猴を牽《ひ》いてインド象の後に随い、次にまた一人同様の猴一疋を牽き、今一疋を肩に乗せて歩む体《てい》を彫り付け、その銘文にこの象と
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