チンギアウスでは婚姻の初夜一童を夫婦間に眠らしむ(英訳ラッツェル『人類史』一巻四四〇頁)。『隋書』に〈女国は葱嶺《そうれい》の南にあり、云々、樹神あり、歳初め人を以て祭り、あるいは※[#「けものへん+彌」、第3水準1−87−82]猴を用いて祭る〉。これは『抱朴子』に〈周|穆王《ぼくおう》南征す、一軍皆化して、君子は※[#「けものへん+爰」、第3水準1−87−78]と為り鶴と為り、小人は虫と為り沙と為る〉。『風来六々部集』に「一つ長屋の佐治兵衛殿、四国を廻って猴となるんの、伴れて還《かえ》ろと思うたが、お猴の身なれば置いて来たんの」てふ俗謡を載せ、アフリカのアクラでは猴を神僕と呼び、人間が生まれ損《そこの》うたものといい、セラコット人とマダカスカル島民は人が罪業のために猴になったと信ず(シュルツェの『デル・フェチシスム』五章六章)。
一六八四年パリ板サントスの『東エチオピア史』一巻七章に、カフル人は猴はもと人だったが、言《ものい》えば働かさるるを嫌い猴となって言わずと説くとある。この通り猴は人の化けたものというところから、昔中央アジアの女国、すなわち女王を奉じ婦女の政権強かった国では、
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