望んで喜び躍りこれを拝むと、他の諸獣も日月|蝕《しょく》を懼《おそ》るるを見るとさような事もありなん。猴の諸種いずれも太《いた》く子を愛す、人に飼われた猴、子を生めば持ち廻って来客に示し、その人その子を愛撫するを見て大悦びし、あたかも人の親切を解するごとし。さればしばしば子を抱き過ぎて窒息せしむるに至る。
 狗頭猴《くとうざる》は異常に獰猛《ねいもう》だ。カリトリケ(細毛猴)はまるで他の猴と異なり顔に鬚《ひげ》あり。エチオピアに産し、その他の気候に適住し得ずというと。博覧無双の名あったプリニウスの猴の記載はこれに止まり、李氏のやや詳《くわ》しきに劣れるは、どうしてもローマに自生なく中国に多種の猴を産したからだ。
 右に見えた黐と履で猴を捕うる話はストラボンの『印度誌』に出で、曰く、猟人、猴が木の上より見得る処で皿の水で眼を洗い、たちまち黐を盛った皿と替えて置き、退いて番すると、猴下り来って黐で眼を擦《す》り、盲同然となりて捕わると、エリアヌスの『動物誌』には、猟人猴に履はいて見せ、代わりに鉛の履を置くと、俺《おれ》もやって見ようかな、コラドッコイショと上機嫌で来って、その履を穿く。豈《
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