『日本及日本人』六六九号へ録した。かくて津軽に果然の自生は誤聞として、台湾には猴の異種が少なくとも一あり、内地産の猴は学名マカクス・スベシオススの一種に限る。
[#「第2図 支那四川産橙色仰鼻猴」のキャプション付きの図(fig2539_02.png)入る]
猴はなかなか多種だが熱帯と亜熱帯地本位のもの故、欧州にはただ※[#「くさかんむり/最」、第4水準2−86−82]爾《さいじ》たるジブラルタルにアフリカに多いマカクス・イヌウスとて日本猴に酷似しながら全く尾のない猴が住んでいたが、十年ほど前流行病で全滅した。そんなこと故欧州の古文学や、里譚《りだん》、俗説に猴の話がめっきり見えぬは、あたかも日本の書物、口碑に羊を欠如するに同じく、グベルナチス伯が言った通り、形色、性行のやや似たるよりアジアで猴の出る役目を欧州の物語ではたいてい熊が勤め居る(グ氏『動物譚原』二巻十一章)、支那に猴を出す多種なれば、古来これに注意も深く、それぞれ別に名を附けたは感心すべし。
李時珍曰く〈その類数種あり、小にして尾短きは猴《こう》なり、猴に似て髯多きは※[#「據−てへん」、32−15]《きょ》なり、猴に似
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