伝承して人間が継続し居るものだが、その人間が逆にことごとく猴の祠堂を奪うてこの堂一つを残したらしいと言った。これは戯言ながら全く理《ことわり》なからず。『立世阿毘曇論《りゅうせあびどんろん》』二に、この世界に人の住む四大洲のほか、更に金翅鳥洲《こんじちょうしゅう》、牛洲、羊洲、椰子洲、宝洲、神洲、猴洲、象洲、女洲ありと説く。猴洲は猴ばかり住む処だ。アラビアの『千一夜譚』にも、わが邦の「猴蟹《さるかに》合戦」にも猴が島あり。『大清一統志』に福建の猴嶼《さるしま》あり。宋の※[#「广+龍」、第3水準1−94−86]元英《ほうげんえい》の『談藪』に、※[#「竹かんむり/均」、第3水準1−89−63]《いん》州の五峯に至りし人、〈馬上遥かに山中の草木|蠕々《ぜんぜん》とし動くを見る、疑いて地震と為す、馭者《ぎょしゃ》いう、満山皆猴なり、数《かず》千万を以て計る、行人独り過ぐれば、常に戯虐に遭う、毎《つね》に群呼跳浪して至り、頭目胸項手足に攀縁《はんえん》す、袞《こん》して毛毬を成す、兵刃ありといえども、また施す所なし、往々死を致す〉。千疋猴が人を蒸し殺す山だ。露人ニキチンの紀行にインドの猴に王
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