その功莫大なり。一度『ラーマーヤナ』を通読すると支那の『西遊記』の孫悟空はどうもハヌマン伝から転出したよう思われる。羅摩、軍《いくさ》に勝ちて楞伽を鬼王の弟に与え、ハヌマンをしてその島を守護せしめた。ハヌマンは娶《めと》らず、強勢慈仁の神にして人に諸福を与う。また諸鬼、妖魅、悪精、巫蠱《ふこ》を司《つかさど》る。悪鬼に付かれし者これに祷《いの》れば退く。流行病烈しき時もこれに祷る。鬼に付かれ熱を病む者、その像や祠《ほこら》を望んだばかりで癒え鬼叫ぶという。インド人は星の廻り合せで一年より七年半の間厄に当る。その時、凶女神パノチ、金、銀、銅、鉄の足で人体に入る。頭に入れば失神し、心臓に入れば貧乏になり、足に入れば身病む。昔十頭鬼王の従弟アヒとマヒ、魔法を以て羅摩兄弟を執《とら》え、パノチに牲せんとした時、ハヌマンその祠に乱入してパノチを踏み潰《つぶ》し二人を救うた縁により、右様の厄年の人は断食してハヌマンに祷れば無難だ。俗伝にこの猴王十二年に一度呼ばわる、それを聞いた者は閹人《えんじん》となるという。予はとかく女難に苦しむから思い切って聞かせてもらおうかしら。猴王像に注いだ油をナマンと呼
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