相異なるごとく、心性もまた大いに差《ちが》う。諸種を解剖してその脳を比較すると大抵相似居るのに、かくまで心意気が懸隔するも不思議だ。驢の忍耐強き、馬の悍強き、騾の頑牢なる、共に古より聞えた。七、八種もある馬属中馬と驢のみ測るべからざる昔より人に豢《か》われてその用を足した事これ厚きに、その他の諸種は更に懐《なつ》かず、野生して今に※[#「二点しんにょう+台」、第3水準1−92−53]《およ》んだも奇態だ。ただしこれら諸種の心性、本来人に豢われるに適せずしてしかるか、将《は》た人が馬と驢を飼い擾《なら》すに、幾久しく辛抱強く力を尽くしたが、他の諸種には尽力が足りなくって、かくのごときかは一疑問だ。けだし今日の馬と驢が、既に出来るだけの諸役に立っており、新たに他の種を仕付けて使わねばならぬような、格段の役目がない故、新種を飼い擾すに十分力が出ぬのじゃろう。すなわち馬と驢が、数千代の永い間仕付けられて、ますます有用の度を加え居るところへ、一朝|山出《やまだし》のゼブラやドーをいかほど急いで仕込んだって、競走の見込み絶無ならずやとはすこぶる名言で、獣畜の上のみでなく、人間教育の上にも、大いに参
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