る所ほとんど皆馬あり。飼養と媾合《こうごう》と選種の次第で、雑多の別態異種を生ぜしめた。またアメリカと濠州には、最初欧人が伴《つ》れ来った馬が脱《ぬ》け出て野生となり、大群をなして未墾の曠野を横行し居ると。
 日本の馬の事、貝原篤信の『大和本草』巻十六にいわく、『旧事記』に保食神《うけもちのかみ》の目に、馬牛の化《な》れる事をいえり、『日本紀』神代巻に、駮駒《ぶちこま》をいえり、これ神代より馬あり、二条良基の『嵯峨野物語』に、馬は昔唐国より渡りし時、耳の獣という、すべて稀なりしかば、帝王の御気色よき大臣公卿のほかは乗る事なし、されば良家と書いては、馬人《うまびと》と訓《よ》むといえり、篤信いわく、馬は神代よりありて、後代に唐より良馬渡りしにやと。『後漢書』東夷列伝に、〈倭《わ》韓の東南大海中にあり云々、その地おおむね会稽《かいけい》東冶《とうや》の東にあり、朱崖|※[#「にんべん+擔のつくり」、第3水準1−14−44]耳《たんじ》と相近く、故にその法俗多く同じ云々、土気温暖、冬夏|菜茹《さいじょ》を生じ牛馬虎豹羊|鵲《じゃく》なし〉。いかにも日本古来虎豹なく、羊は後世入ったが、今に多く
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