の懐胎、しかるに康熙《こうき》某年、旗下人の家に、騾ありて子を生みついに恙《つつが》なし〉。騾の牝が他の馬種と合いて、子を産んだ事は時に聞くも、少なくともこの数千年間、無数の騾を畜《こ》うた内、牝牡《ひんぼ》の騾の間に子生んだ例あるやは極めて疑わし、故に馬属の諸種は現時|相《あい》雑《まじ》わって子あれども、その子同士で繁殖し行き得ぬ世態にあると、『大英百科全書』から受け売りかくのごとし。

     性質

 同書にまたいわく、欧州では、有史前新石器時代に野馬多く、その遺骨|夥《おびただ》しく、当時の人の遺物とともに残れるを見ると、当時の人は専ら野馬猟を事とし、その肉を食用したので、野馬の遺骨を観《み》、当時の人が骨や馴鹿《トナカイ》角に彫り付けた野馬の図から推して、その野馬は小柄で身重く、※[#「髟/宗」、第4水準2−93−22]《たてがみ》と尾|粗《あら》くて、近時全滅した南ロシアのタルパンてふ野馬や、現存蒙古の野小馬《ワイルド・ポニー》に酷《よく》似いたと知る。而《しか》して有史前の欧人はその野馬を養《か》いもした。さて今日に至っては、馬は人手で諸方へ行き渡り、地球上人の住み得
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