子供が自活し得るようになって始めて出で去る。昔人この事に気付いたものか、和漢とも雌雄の海馬を握れば安産すといい、その母愛さるればその子抱かるてふ理屈に拠ってか、予の宅前に棲《す》む人はこれを夫婦敬愛の守りとしている。また予その拠り所を知らねど、仏人コンスタンチンの『|熱帯の自然篇《ラ・ナチュール・トロピカル》』に、艶道の女神ヴェヌスこの魚を愛すと載す。日本や英国の産は数寸を出ねど、熱地の海のは二フィートに至る。楊枝魚《ようじうお》和歌山で畳針、海草郡下津浦でニシドチ、田辺辺で竜宮の使いというは海馬と近属ながら尾に捲く力がない。雄の腹下や尾裏に子を懐く事海馬に同じ(長尾驢《カンガルー》など濠州産の諸獣も腹の嚢中に子を育つるが、海馬などと異なり雌がその役を勤める)。楊枝魚多くは海産だが、和歌山などには河に住むもある。かつて高野山の宝物に深沙竜王と札打ちあったは大楊枝魚で、その王子とあったは小さき海馬だった。インドの経典に、馬頭鬼ダジアンス海中に霊香を守り常紐天《ヴィシュヌ》乳海中に馬身を現ずという。『無明羅刹経《むみょうらせつぎょう》』に、海渚中の神馬王八万四千の諸毛長く諸動物これに取り着
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