いて助命さる。『根本説一切有部毘奈耶』に、天馬|婆羅訶《ばらか》海より出て岸辺の香稲を食う。この馬五百商人を尾と鬣《たてがみ》に取り着かせ海を渡りてその難を脱れしめたとある。話の和訳は『今昔物語』や『宇治拾遺』に出《い》づ。『大乗荘厳宝王経』にこの聖馬王は観音の化身とある。邦俗ホンダワラてふ藻を神馬草というは、その波に揺れながら枝葉間に諸生物を安住せしむる状《さま》を件《くだん》の神馬王の長毛に比して学僧輩が名づけたのかも知れぬ。さなくとも長きもの神馬の尾髪、神子の袖、上臈のかもじと『尤《もっとも》の草紙』に見る通り、昔は神の乗り物として社内に飼う馬の毛を一切截らなんだ。それを件の藻に思い寄せて神馬草と呼んだでもあろうか。ただし(四)〔性質〕に述べた通りこの藻で馬を飼った故名づくてふ説もある。この藻の中に海馬や楊枝魚多く住む。さて和漢アラビヤ等に竜が海より出で浜辺の馬に駿足の竜駒を生ます談多い。馬属ならぬものが馬を孕ますはずなければ、これは人知れず野馬か半野馬が孕ますに相違ないが、海獣中遠眼に馬らしく見ゆる物もあり。また海中に上述の飛馬竜、深沙竜王、竜宮の使いなど呼ばるる魚あり。殊に海
前へ
次へ
全212ページ中148ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング