載せぬを見たという)。仏教の八部衆天竜|夜叉《やしゃ》の次に、乾闥婆《カンダールヴァ》あり最末位に緊那羅《きんなら》あり、緊那羅(歌楽神また音楽天)は美声で、その男は馬首人身善く歌い、女端正好く舞い多く乾闥婆の妻たり。香山の大樹緊那羅王瑠璃琴を奏すれば、一切の大衆仏前をも憚《はばか》らず、覚えず起ちて舞い小児同然だったという。乾闥婆は食香また尊香と訳し天の楽神で宝山に住み香を守る。天神楽を作《な》さんと欲せば、この神の相好たちまち反応変化し自ら気付いて天に上り奏楽す。また能く幻術《てじな》を以て空中に乾闥婆城(蜃気楼)を現ず。梵教の伝に、この神|帝釈《インドラ》と財神《クヴェラ》に侍属し水と雲の精アプサラスを妻とし、女を好み婦女を教え婚姻を司り日神の馬を使う。ヒンズ法に男女法式に拠らず即座合意の結婚を乾闥婆と称え、ヒマラヤ地方の諸王の妻で、后より下、妾より上なるをもかく呼ぶ。乾闥婆が馬や驢に基づいて作られた神たるはグベルナチス伯の『動物譚原《ゾーロジカル・ミソロジー》』に詳論あり。好んで妓楽を観聴し戒緩だった者この楽神に転生す、布施の果報で諸天同様楽に暮すと仏説じゃ。吾輩随分田舎芸妓に
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