して夜の明けぬ間に厩《うまや》へ還《かえ》るくらいの芸当は苦もなく出来たはずだが、制禁厳重となりてその事に及ばなんだ云々と。ベーカーの『アルバート・ニャンザ記』に、欧州で鈍な男を驢と呼ぶがエジプトの驢は勘定が巧い。谷多き地を旅するに駱駝谷底に陥《お》ちて荷物散乱するを防ぐため、谷に遭うごと駱駝の荷を卸し、まず駱駝を次に荷物を渡してまた負わせ、多少行きて谷に逢いてまたかくする事|度重《たびかさ》ねる内、驢ども発明自覚して谷に出会いて止まれの号令を聞くごとに、二十一疋|揃《そろ》いも揃うて地に伏して起たず。駱駝の荷を揚げ卸し谷を渡す間に眠ってやろうとの算段で、沙上に転び廻りて荷を覆《くつがえ》しすこぶる人を手古摺《てこず》らせたとある。ロメーンズの書に、ニュウオーレヤンスの鉄道馬車の驢は鉄道を端から端まで五回走れば釈《と》かる。四回走りても何ともせぬが五回目走りおわると必ず鳴く、以て驢は五の数を算え能うと知ると言う。ただし五回走れば厩人が驢を釈こうと待ち構えいるからそれを見て鳴くのかも知れぬから精査を要するといった。一九〇四年ベルリンで大評判だった「伶俐なハンス」てふ馬は種々不思議の芸を演
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