四図[#省略])。『孔叢子《こうそうし》』にこの獣|甘草《かんぞう》を食えば必ず蛩々《きょうきょう》とて青色馬《あおうま》に似た獣と※※[#前の「※」は「うまへん+巨」、後の「※」は「うまへん+虚」、97−3]《きょきょ》とて騾《ら》のごとき獣とに遺《のこ》す、二獣、人来るを見れば必ず蹶を負うて走る、これは蹶を愛するでなくて甘草欲しさだ、蹶も二獣の可愛さに甘草を残すでなく足を仮るためじゃとある、まずは日英同盟のような利害一遍の親切だ、『山海経《せんがいきょう》』に〈飛兎背上毛を以て飛び去る〉とあるも跳eらしい。
 東洋でも西洋でも古来兎に関し随分間違った事を信じた。まず『本草綱目』に『礼記』に兎を明※[#「※」は「めへん+示」、97−8]《めいし》といったはその目|瞬《まばた》かずに瞭然たればなりとあるは事実だが兎に脾臓なしとあるは実際どうだか。また尻に九孔ありと珍しそうに書きあるが他の物の尻には何《いく》つ孔あるのか、随分|種々《いろいろ》と物を調べた予も尻の孔の数まで行き届かなんだ。ただし陳蔵器《ちんぞうき》の説に〈兎の尻に孔あり、子口より出づ、故に妊婦これを忌む、独り唇欠くために
前へ 次へ
全45ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング