十二支考(2)
兎に関する民俗と伝説
南方熊楠

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)一篇を綴《つづ》る

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)梵名|舎々迦《ささか》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)※鼠[#「※」は「ねずみへん+奚」、92−8]《はつかねずみ》

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 この一篇を綴《つづ》るに先だち断わり置くは単に兎と書いたのと熟兎《なんきん》と書いた物との区別である。すなわちここに兎と書くのは英語でヘヤー、独名ハーセ、ラテン名レプス、スペイン名リエプレ、仏名リエヴル等が出た、アラブ名アルネプ、トルコ名タウシャン、梵名|舎々迦《ささか》、独人モレンドルフ説に北京《ペキン》辺で山兎、野兎また野猫児と呼ぶとあった。吾輩幼時和歌山で小児を睡《ねむ》らせる唄《うた》にかちかち山の兎は笹《ささ》の葉を食う故耳が長いというたが、まんざら舎々迦《ささか》てふ《〔という〕》[#「てふ」に「〔という〕」がルビとしてかかる、92−6]梵語に拠《よ》って作ったのであるまい。兎を野猫児とはこれを啖肉獣たる野猫の児分《こぶん》
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