はく》してこれを裂く、鷹すなわち死す云々、また鷹石に遇えばすなわち撲つあたわず、兎これを見てすなわち巌石の傍に依って旋転す、鷹これを如何《いかん》ともするなし云々〉、『イソップ物語』に鷲に子を啖われた熟兎樹を根抜きに顛覆《てんぷく》し鷲の巣中の子供を殺した話見え、インドに兎己れを食わんとする獅子を欺き井に陥るる話あり。またいわく月湖辺《つきのうみべ》に群兎住み兎の王を葬王《ヴィガヤダソタ》と号《な》づく。象群多くの兎を踏み殺せしを憤り兎王象王に月諸象を悪《にく》めりと告ぐ。象月を見んと望みければすなわちこれを湖畔に伴れ行き水に映れる月影を示す。象月に謝゜せんとて鼻を水に入るるに水掻き月影|倍多《ふえ》たり、兎象に向い汝湖水を擾《みだ》せし故月いよいよ瞋《いか》ると言い象ますます惶《おそ》れ赦《ゆるし》を乞い群象を帥《ひき》いてその地を去る、爾後《じご》兎群静かに湖畔に住んで永く象害を免ると(一八七二年版グベルナチス『動物譚原《ゾーロジカル・ミソロジー》』巻二章八)。かく狡智に富む故兎を神とした人民少なからず。すでに『古事記』に兎神を載せ、今も熊野で兎を巫伴《みことも》と呼ぶは、狼を山の
前へ
次へ
全45ページ中24ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング