二※[#「※」は「『契』の上の部分+虫」を上下に組み合わせる、104−6]《つめ》のみで行《ある》かせたり蠅の背中に仙人掌《サボテン》の刺《とげ》を突っ込み幟《のぼり》として競争させたり、警察官が婦女を拘留して入りもせぬ事を根問《ねど》いしたり、前和歌山県知事川村竹治が何の理由なく国会や県会議員に誓うた約束をたちまち渝《ほぐ》して予の祖先来数百年奉祀し来った官知社を潰しひとえに熊楠を憤《おこ》らせて怡《よろこ》ぶなどこの類で、いずれも仏眼もて観《み》れば仏国のジル・ド・レッツが多数の小児を犯姦致死して他の至苦を以て自分の最楽と做《な》したに異ならぬ。川村の事は只今《ただいま》グラスゴウ市の版元から頼まれて編み居るロンドン大学前総長フレデリク・ヴィクトル・ジキンス推奨の『南方熊楠自伝』にも書き入れ居るから外国までの恥|曝《さら》しじゃ。とにかくかかる残忍性多き者が平気でおらるるこの世界はまだまだ開明などとは決して呼ばれぬべきはずだ。さて一寸の虫にも五分の魂でマヤースの『ヒューマン・パーソナリチー』に犬にも幽霊ある事は予も十数年研究していささか得たところあるが不幸にも観る人の心を離れて幽霊
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