にも『本草』にその物を搏《う》つや三《み》たび躍《おど》って中《あた》らずんばすなわちこれを捨つと出《い》づ。川柳に「三たび口説《くど》いて聴かれず身|退《ひ》く振られ客」とあるごとし、『爾雅』に虎の浅毛なるを山※[#「※」は「むじなへん+苗」、12−15]《さんみょう》、白いのを※[#「※」は「虎+甘」、12−15]《かん》、黒きを※[#「※」は「虎+夂と黒を上下に組み合わせたもの」、12−15]《いく》、虎に似て五指のを※[#「※」は「むじなへん+區」、12−15]《ちゅ》、虎に似て真でないを彪《ひょう》、虎に似て角あるを※[#「※」は「がんだれ+虎」、12−16]《し》というと言って、むつかしい文字ばかり列《なら》べ居る。『国史補』には四指のを天虎《てんこ》五指のを人虎と俗称すと出づ。ちょっと聞くと誠に出任せな譫語《たわごと》のようだが実は支那に古来虎多く、その民また特に虎に注意して色々と区別を付ける事あたかもわが邦で鷹や馬に色々種別を立てたごとし。サモエデスは馴鹿《となかい》に注意深き余りその灰褐色の浅深を十一、二の別名で言い分け、アフリカのヘレロ人は盛んに牧牛に勤め牛の毛色を
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