た例はインドや欧州等に実際あるらしい、一八八〇年版ポールの『印度藪榛生活《ジャングル・ライフ・イン・インジア》』四五七頁以下に詳論しある故少々引用しよう。曰くインドで狼が人子を乳した例ウーズ州に最も多い、しかしてこの州がインド中で最も狼害の多い所でまず平均年々百人は狼に啖《く》わる。スリーマン大佐の経験譚によればその辺で年々小児が狼に食わるる数多きは狼窟の辺で啖われた小児の体に親が付け置いた黄金《きん》の飾具を聚《あつ》めて渡世とする人があるので知れる、その人々は生計上から狼を勦滅《とりつく》すを好まぬという。一八七二年の末セカンドラ孤児院報告に十歳ほどの男児が狼※[#「※」は「あなかんむり+果」、28−16]より燻《ふす》べ出された事を載せた。どれほど長く狼と共に棲んだか解らぬが、四肢で行《ある》く事上手なと生??nむところから見ると習慣の久しきほとんど天性と成したと見える、孤児院に養われて後も若き狗様《いぬよう》に喚《うな》るなど獣ごとき点多しと載せた。また一八七二年ミネプリ辺で猟師が狼※[#「※」は「あなかんむり+果」、29−3]から燻べ出し創《きず》だらけのまま件の孤児院に伴れ
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