をして遣った、米獅《ピューマ》これを徳とし産後外出して獣を搏《う》ち将《も》ち来て肉を子供と彼女に分ちくれたので餓死を免がれた、そのうちインディアンが彼女を擒《いけど》り、種々難儀な目に遭わせたが、遂にスペイン人に賠《つぐな》われて城に帰った、それは吉《よ》かったが全体この女性質慓悍で上長の人の命に遵《したが》わぬから遂に野獣に啖《く》わす刑に処せられた、ところが天幸にも一番に彼女を啖わんと近づき寄ったのが、以前出産を助けもろうた牝米獅《めピューマ》で、見るより気が付き、これは飛んだところで御目に懸ります、忰《せがれ》どもも一人前になって毎度御噂を致しいる、女ながらも西大陸の獣中王たる妾《わたし》が御恩報《ごおんがえ》しに腕を見せましょうと、口に言わねど畜生にも相応の人情ありて、爪牙を尖らせ他の諸獣を捍《ふせ》いで一向彼女に近づかしめず、見物一同これほど奇特な米獅《ピューマ》に免じて彼女を赦さずば、人間が畜生に及ばぬ証明をするようなもの、人として獣に羞《は》じざらめやと感動して彼女を許し、久しく無事で活命させたとある。『淵鑑類函』に晋の郭文かつて虎あり、たちまち口を張って文に向うたんで
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