のもっとも大きな物で毛皮美麗貌形雄偉行動また何となく痒序《おちつい》たところから東洋諸邦殊に支那で獣中の王として尊ばれた。『説文』に虎を獣君という、山獣の君たればなり、また山君というと、わが邦で狼を大神と呼び今も熊野でこれを獣の王としまた山の神と称うるごとし。『揚子』に聖人虎別、君子豹別、弁人狸別、狸変ずればすなわち豹、豹変ずればすなわち虎、これは聖人君子弁人を順次虎豹狸に比べたのだ。『管子』に〈虎豹は獣の猛者なり、深林広沢の中に居る、すなわち人その威を畏れてこれを載す、虎豹その幽を去って而して人に近づくすなわち人これを得てその威を易《あなど》る、故に曰く虎豹幽に託《よ》って威載すべきなり〉。熊楠|謂《おも》うに昔|朱※[#「※」は「月+彡」、19−8]《しゅゆう》隠居して仕えず、閻負涼《えんぶりょう》に使し※[#「※」は「月+彡」、19−9]を以て王猛に比し並称す。秦主|苻堅《ふけん》猛を侍中とせし時猛※[#「※」は「月+彡」、19−9]に譲れり、のち猛死し堅南晋に寇《こう》せんとす、苻融石越等皆|諫《いさ》めしも※[#「※」は「月+彡」、19−10]独りこれを賛し、にわかに※水[#
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