ょうじょう》桃を好み鼠|蕎麦《そば》を好み雉子《きじ》胡麻を好み、虎狗を食して淫を起し狗|赤小豆《あずき》を食して百疾を癒《いや》し猫天蓼を※[#「※」は「くちへん+敢、13−15]《くろ》うてしきりに接《まじわ》る、狐焼鼠を見て命を失う猩桃を得て空に擲《なげう》つ、鼠蕎麦に就いて去る事を知らず、雉子胡麻を食して毎朝来ると見ゆ。皆まで嘘でなかろう、虎が蝟に制せらるるは昨今聞かぬが豪猪《やまあらし》を搏《う》つとてその刺《はり》に犯され致命傷を受くる事は近年も聞くところだ。『物類相感志』に虎が人を食うごとに耳上に欠痕もしくは割裂を生ずる、その数を験して何人食ったと判るとある。また『淵鑑類函』に〈虎小児を食わず、児痴にして虎の懼るべきを知らず、故に食わず、また酔人を食わず、必ず坐して守り以てその醒《さ》むるを俟《ま》つ、その醒むるを俟つにあらず、その懼るるを俟つなり〉とある、自分を懼れぬ者を食わぬのだ。さていわく〈およそ男子を食う必ず勢より起る、婦人は必ず乳より起る、ただ婦人の陰を食わず〉とは大椿件だ。十六世紀にレオ・アフリカヌスが著した『亜非利加紀行《デスクリプチヨネ・デル・アフリカ》』
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