に婦女山中で獅に出会うた時その陰を露《あらわ》せばたちまち眼を低うして去るとある。これは邪視《イヴル・アイ》を避くるに女陰を以てすると同一の迷信から出たらしい。邪視の詳しき事は、『東京人類学会雑誌』二七八号二九二頁以下に長く述べ置いた、ただし支那説は虎が女陰を食わぬばかりで、見たら逃げるとないからアフリカの獅のごとくこれを怖るるでなく単にその臭味を忌む事という意味らしい。
(三) 虎と人や他の獣との関係
『大英類典《エンサイクロペジア・ブリタニカ》』第十一版巻二十六に「牝虎は二ないし五、六児を一度に産むが三疋が普通だ、その子を愛する事甚だしく最も注意してこれを守る、生れて二年目に早《はや》自分で餌を求める、それまで母と一緒に居る、その間母虎の性殊に兇暴で子が乳離れする頃より鹿|犢《こうし》豕等を搏《う》って見せその法を教ゆ、この際牝虎の猛勢惨酷その極に達する、多分子を激して手練を積ましむるためだろう、さて十分殺獲術を究めた上ならでは子と離れぬ、若い虎は老虎より迥《はる》かに物多く殺し一度に三、四牛を殺す事あり、老虎は一度に一つより多く殺す事|稀《まれ》で、それも三、四また
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