齡芫uに遇《お》うて五戒を授かり、昼夜観音経を念ずると斑虎《ふこ》に導かれ故郷へ還り得たと載す、智者大師の『観世音義疏《かんぜおんぎそ》』に晋の恵達、凶年に甘草《かんぞう》掘るとて餓えた羌人《きょうじん》群に捕われ、かの輩肥えた人からまず食うので達と一小児と残さる、明日は食わるるに相違ない今宵《こよい》限りの命と懸命に称名《しょうみょう》誦経すると、暁近く羌人が引き出しに来るところへ虎|跳《おど》り出で、諸羌人を奔《はし》らし達と小児と免れ得た、これだから信心せにゃならぬとある。ロガンの『ジョホールのビヌア人誌』にポヤンヘ僧と医を兼ねた一級で、病を治するのみかはまた病を生ぜしむる力あり、ポヤン毎《つね》に虎の使い物一疋常住附きいる、人虎に啖わる時はその虎の主ポヤンの機嫌を損じた報いと信ぜらると見ゆ、一八三二年インドのマニプル州を巡察したグランド大尉の説に、クボ人はこの辺の虎滅多に人を襲わぬとて、虎に近くいるを一向恐れず、ただし一度人を啖わば十の九は以後やむ事なき故、村を移してその害を避くる、虎人肉の味を覚えて人を搏《う》ち始むると謂《おも》わず、その地の神怒れるに由《よ》ると信じ、虎初
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