めたる興味を感じて来た人間であると思っているらしい。私もそういうつもりで彼に話しかけたのであるが、実際はそんなこととは大違いになって、むしろ彼と会話を開かない方が仕合わせであったどころか、更に何か私をおびやかすようなものがあった。
彼はトンネルの入り口の赤い灯の方を不思議そうに見つめて、何か見失ったかのように周囲を見まわしていたが、やがて私の方へ向き直った。あの灯は彼が仕事の一部であるらしく思われた。
「あなたはご存じありませんか」と、彼は低い声で言った。
その動かない二つの眼と、その幽暗な顔つきを見た時に、彼は人間ではなく、あるいは幽霊ではないかという怪しい考えが私の胸に浮かんで来たので、私はそのご絶えず彼のこころに感受性を持つかどうかを注意するようになった。
私はひと足さがった。そうして、彼がひそかに私を恐れている眼色を探り出した。これで彼を怪しむ考えもおのずと消えたのである。
「君はなんだか私を怖《こわ》そうに眺めていますね」と、私はしいて微笑《ほほえ》みながら言った。
「どうもあなたを以前に見たことがあるようですが……」と、彼は答えた。
「どこで……」
彼はさきに見つめ
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