」
「なに大丈夫ですよ。お午にはうなぎも食べたし。」
「よくお手に入つてね。」
「美耶川さんが持つてきて下すつたんですよ。伊東へ行くのならしばらく會へないからといつて。」
「何て御親切なんでせう。」
「さうさう、お風呂が沸いてるんですよ。あなたお入んなすつたら?」
「おばあさんこそ早く入つてお休みなさい。私は御本家に伺つて來なくちや。」
「さうですね。來ると云つてあるから、待つてるかも知れませんね。」
私は又「來るに及ばぬ」を思ひ起し、苦笑せざるを得なかつた。
本家では夫妻も子供達も何かいそいそと私を迎へ入れてくれた。私は平素の無沙汰を詫び、接收の惧れの去つたらしい悦びを述べると、本家は財産税に就いての長い愚痴になつた。
「今度はおばあさんが御厄介になりに伺ふさうで、どうも、――」
「いえ。でもおばあさまは何と仰しやつてらつしやいましたか。」
「昨日見えてね、痒いところがあるから二三日温泉に入つてくる。そりやいい。しかしどうして行らつしやると訊いたら、伊東から迎へに來る。――でも明日は日曜で混みやしませんか。」
「通勤者はないわけでせう。私は又おばあさまがお出かけになると云つたら、
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