こちらでお送りでも下さるのぢやないかと思つて、わざと日曜を選んだわけでもあつたのですが。何分お年のことですから、途中どんなことがないものでもない。」
「なに大丈夫でせう。」
本家はのんきさうにさう云ふうち、ふと、追放令以來めつきり氣力を失つた顏に内心の狼狽を滲ませて、
「あつしも近頃は年でね、驛の昇降にも自信がないくらゐなんですよ。だからおばあさんをあつしがおんぶして行くといふわけにも行かない。代りに幸夫をやれるといいんだが、明日はあいにく舊師の謝恩會か何かあるとかで。」
「いいえ、いいんですよ。おばあさまには豫め事を分けて御本家にかうかう申し上げてくれと手紙を出しておいたのですが、九十三の頭ではそれをこちらへお傳へすることも御無理だつたのに違ひありません。私は親子のことですから、假令どんなことがあつても、何と云はれても、お氣持に添へさへすればそれでいいんですが、血の續いてゐないものには一應の形をつけないとと思つたものですから。その代りおばあさまが又こちらへ歸りたいと仰しやり出した時には、幸夫さんにでもお迎へに來ていただけますでせうね。」
「そりや、電報でも打つて下さればすぐ。休みの
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