じん》と云《い》つた態度《たいど》がありましたよ、其《それ》が甚麼《どんな》機《はずみ》で相近《あひちかづ》く事に成《な》つたのであるか、どうも覚えませんけれど、いつかフレンドシツプが成立《なりた》つたのです、
尤《もつと》も段々《だん/″\》話合《はなしあ》つて見ると、五六|才《さい》の時分《じぶん》には同《おな》じ長屋《ながや》の一軒《いつけん》置《お》いた隣同士《となりどうし》で、何《なん》でも一緒《いつしよ》に遊んだ事も有つたらしいので、那様《そんな》事から一層《いつそう》親密《しんみつ》に成《な》つて、帰路《かへりみち》も同じでありましたから連立《つれだ》つても帰る、家《うち》へ尋《たづ》ねて行《ゆ》く、他《さき》も来る、そこで学校外《がくかうぐわい》の交《まじはり》を結《むす》ぶやうに成《な》つたのです、
私《わたし》は程無《ほどな》く右の中学を出て、芝《しば》の愛宕下町《あたごしたまち》に在《あ》つた、大学予備門《だいがくよびもん》の受験科《じゆけんくわ》専門《せんもん》の三田英学校《みたえいがつこう》と云《い》ふのに転学《てんがく》しました、それから大学予備門《だいがくよびもん》に入つて二|年《ねん》経《た》つ迄《まで》、山田《やまだ》とは音信不通《いんしんふつう》の状《かたち》で居《ゐ》たのです、其《それ》には別《べつ》に理由《りいう》も何《なに》も無い、究竟《つまり》学校が違つて了《しま》つた所から、お互《たがひ》に今日《こんにち》あつて昨日《さくじつ》も明日《みやうにち》も無い子供心《こどもごゝろ》に、漠然《ぼうつ》と忘《わす》れて了《しま》つたのです、すると、私《わたし》が二|級《きふ》に成《な》つた時《とき》、山田《やまだ》が四|級《きふ》に入つて来たのです、実に這麼《こんな》意外な想《おもひ》をした事が無い、第二中学に居《ゐ》た時は私《わたし》より二|級《きふ》上《うへ》の山田《やまだ》が、予備門《よびもん》では二|級《きふ》下《した》の組《くみ》に入つて来たのでせう、私《わたし》は何為《どうし》た事かと思ひました、然《しか》し、実に可懐《なつかし》かつたのです、顔を見ると手を把《と》つて、直《たゞち》に旧交《きふこう》が尋《あたゝ》められると云《い》ふ訳《わけ》で、其頃《そのころ》山田《やまだ》も私《わたし》も猶且《やはり》第二中学時代
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