けいめう》な短編《たんぺん》を盛《さかん》に書いて居《ゐ》ました、其等《それら》を見て山田《やまだ》は能《よ》く話をした事ですが、此分《このぶん》なら一二|年内《ねんない》には此方《こつち》も打つて出て一合戦《ひとかつせん》して見やう、而《さう》して末《すゑ》には天下《てんか》を…………などゝ云《い》ふ大気焔《だいきえん》も有つたのです、
処《ところ》へ或日《あるひ》石橋《いしばし》が来て、唯《たゞ》恁《かう》して居《ゐ》るのも充《つま》らんから、練習の為《ため》に雑誌を拵《こしら》へては奈何《どう》かと云《い》ふのです、いづれも下地《したぢ》は好《すき》なりで同意《どうい》をした、就《つい》ては会員組織《くわいゝんそしき》にして同志《どうし》の文章を募《つの》らうと議決《ぎけつ》して、三人《さんにん》が各自《てんで》に手分《てわけ》をして、会員《くわいゝん》を募集《ぼしう》する事に成《な》つた、学校に居《を》る者、並《ならび》に其以外《それいぐわい》の者をも語合《かたら》つて、惣勢《そうぜい》二十五|人《にん》も得《え》ましたらうか、其内《そのうち》過半《くわはん》は予備門《よびもん》の学生でした、
今日《こんにち》になつて見ると、右の会員の変遷《へんせん》は驚《おどろ》く可《べ》き者《もの》で、其内《そのうち》死亡《しばう》した者《もの》、行方不明《ゆくへふめい》の者《もの》、音信不通《いんしんふつう》の者《もの》等《など》が有るが、知れて居《ゐ》る分《ぶん》では、諸機械《しよきかい》の輸入《ゆにふ》の商会《しやうくわい》に居《ゐ》る者《もの》が一人《ひとり》、地方《ちはう》の判事《はんじ》が一人《ひとり》、法学士《はふがくし》が一人《ひとり》、工学士《こうがくし》が二人《ふたり》、地方《ちはう》の病院長《びやうゐんちやう》が一人《ひとり》、生命保険《せいめいほけん》会社員《くわいしやいん》が一人《ひとり》、日本鉄道《にほんてつだう》の駅長《えきちやう》が一人《ひとり》、商館番頭《しやうくわんばんたう》が築地《つきぢ》(諸機械《しよきかい》)と横浜《よこはま》(生糸《きいと》)とで二人《ふたり》、漁業者《ぎよげふしや》と建築家《けんちくか》とで阿米利加《あめりか》に居《を》る者《もの》が二人《ふたり》、地方《ちはう》の中学教員《ちうがくけういん》が一人《ひとり》
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